
うーん、これが発表された時点では最高傑作って作者本人が断言していたが、そうでもないかも。いや、いい作品ですが。
独立した中篇が3編収録されていて、わたしは表題作より、真ん中の『スローモーション』がより衝撃的。ネタばらしになるので言えませぬが、アレとかぶっているとは言え、これはこれで間接的な鈍痛ショックみたいな(意味不明)。
全編に共通するのは、「より速く」「より強く」を追究したオリンピック超速文体と徹底した対決姿勢。
古川日出男がコレにアイデンティファイしたんなら文句は言えませんが(いやコレもすごいんですが)、微妙に期待してきた方向からズレてきていてニントモカントモ。

外れなし日出男印。『LOVE』『ぼくたちは歩かない』路線をさらに軽く推し進めた感じ。今回はとにかく「歩く」。井の頭公園の源流から、神田川沿いを、海まで。がんがんがんと歩く。謎のおじさん、悪がき三人組、既に死んでいるカネコ姉さん、たちと。8人組で、ときには6人組で、そして16人組で、または3人組で。
ぼく個人の好みとしては、もっとヘビーなものに回帰してほしい。『サマバケ』でも例えば、新宿区と豊島区の間で夏休みの間だけ中学生たちが代々抗争を繰り広げる評議会みたいなアイデアをもっと。(抗争といっても決着はルービックキューブでつけたりするんですが)
しかし、『EP』は何の略でしょう? EP版のEP? エクストラ・ポーレーションか? あと、登山の三つの鉄則の残り二つは?
などなど、謎は尽きないのでした。つまりお奨め。

『LOVE』がお気に召したならぜひ。
ほんものとにせもの、レプリカと愛、埋め立て地とネズミーランドへの憎悪(笑)が満載された、珠玉の短編集。とくに『物語卵』の神経質なたくさんの声が圧巻。

デビュー作、若書きの「サウンドトラック」。
と途中で思ったのですが、迫力と底の抜け加減では「サウンドトラック」の方がハチャメチャで上だし、「13」の方はスタイリッシュで思弁的だし、どっちが若書きかというのは難しい。というか最初から完成された作家だったのか。
「ベルカ」「gift」「LOVE」なんかの元型がアチコチに出てきてとても楽しい。
文章で溺死できる作家が現代日本にもいました。古川日出男。「gift」で好きなのは『さよなら神さま』『低い世界』『台場国、建つ』『夏が、空に、泳いで』『天使編』『アルパカ計画』『雨』・・・キリないじゃん(笑) さまざまな手練手管で(詩的、不条理、シュール、手記、等々)何かに目覚めたり気付いたり分かったり知ったりすることを描いている、ような気がするけど、そんなことは関係なく、酔うが吉。