「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」
「いまひとたびの」H.ビーム・パイパーが良い。だれも推さないでしょうがw
作品紹介前書きを一切読まずに読んだので、最後まで続く能天気な展開にびっくり。父親と13歳の息子の底抜け脱線的な会話が素晴らしい。
佐々木中「読め、書け、革命だ、わっしょい」もとい「文学バンザイ、となりのルジャンドル」もとい「切りとれ、あの祈る手を」読了。
なにかメタなオチがあるのかと思ったら、最後まで大真面目。そんな革命ばっかし目指して読むなんてこと、ようしまへんで。でも「いま、ここ」がなんら特別なものではない、という感覚は禿同。ベケットをそう読んでくれてありがとう。
で、読み終わってもたぶん狂っていないので読めなかったことは間違いないけど一言。
私は何万年も生きられないので好むと好まざるとに関わらずこの希薄で息苦しい情報の世紀で読まなければならず、情報を精緻に積み上げた挙句に破綻する様を文学に求めるのですが、ダメですか。
マイケル・フレイン「コペンハーゲン」読了。
1942年、占領下デンマークの恩師ボーアのもとを訪れたドイツ科学の筆頭ハイゼンベルクは何を伝えたのか? ナチスに原爆を与えぬよう研究を遅らせた? 実用的な研究が不得手だった? 不確定な真実を不確定なまま描く。物理を知らないと苦しいかも。
「宗教が往く」松尾スズキ
自意識過剰饒舌体小説の極北北東ではないか。トヨザキ社長がべた褒めするのも無理ないな、でもやたら高度なテクニックを無理矢理な伏線回収に費やされていて、あと1.5倍の分量があれば歴史に残る大傑作だったのに、と思うのは俺だけ?
真ん中あたりで出てくる安い居酒屋はほんとにどこかにあるに違いない。店員が「結果オーライ! よろしくバンバンどどめ色ぉ!」「勇気ドンドンどどめ色ぉ!」と叫ぶところw
「卵をめぐる祖父の戦争」
わしの中では、今年のベスト3くらいには入るよ。
ポケミスで出たのはいかがなものか。読みのがした潜在読者多数と思われ。
そんな意味で、いま読んでる「卵をめぐる祖父の戦争」は、とてつもなくリアルで悲惨な戦争の上に童貞青春小説を重ねるという手法で、手垢がつきまくった二つをまったく新しいものとして読ませる。眉間にシワを寄せて失笑する、というこれまで経験したことのない感情を呼び起こす。こういうのが小説。
「やんごとなき読者」アラン・ベネット 読了。
笑わせながら読書の本質を明らかにして行く。のかどうか分かりませんが、70代後半で読書に目覚めたエリザベス女王が精神的に成長し周囲の人々の感情や社会的区別に敏感になっても、何の役にも立たない、すなわち読書はなんの役にも立たない、のです。
「どろんころんど」北野勇作 読了。
オリジナルがないところで真似をすることの意味を考えたり。自分はヒトデナシではないと思ってる人は読むとよいと思う。でもなんで係長だけこんなに喋るのか謎。
作者からw あれはたぶん社長のせいですね。
都会の薄気味悪いヒトデナシたちと、係長やドロ団子屋の店主との違いが分からなかったのでした。でも、都会の方々も実はオシャレなカフェとかでベラベラ喋ってるのかもしれないと今思いました。
「マルドゥック・スクランブル(完全版)」読了
2003年版は知らないので比較はできないけど、カジノシーンで激興奮。ほんとに延々とカジノだ。ルーレットの老婦人ディーラーがかっこよすぎ。ネズミが切実に欲しい。
10年後の改訂では、悪役シェルをもう少し立てて下さい。ストレスで脳が腐るのを防ぐ為に自分の記憶と女を殺す稀代の博打打ち。設定は格好良いのにw
「ピエール・リヴィエール」
違和感は当たり前で、フーコーの論考ではなかったw 論考そのものは付け足しってか、論者たちが自分で「(手記については)何も分析しないという選択」をしたとか云ってるしw やっぱり「手記」の異様な整然さに圧倒されるのことよ。
アヴィグドル・ダガン
チェコ生まれのユダヤ人。共産党独裁まではチェコ外交、イスラエルに移ってからはイスラエルの外交官としてラングーン、ベオグラード、ワルシャワ、オスロ、レイキャビク、東京、ウィーンなどを歴任。
「宮廷の道化師たち」は短い長編。収容所で所長の道化師として生き延びる語り手(せむし)、小人、ジャグラー、占師の4名。こちらもドラマチックであることこの上なし。前半の何があっても決してジャグリングをやめてはいけない、悲惨なエピソードで胸骨わしづかみ。
「古いシルクハットから出た話」は外交官として見聞した話を思いきりドラマチックに編集した(と思われる)短編集。ちょっと作りすぎと思ったりもするが、官邸の現地使用人が亡くなった際に彼がいかに優れた使用人であったか伝えるよう懇願される「神様への手紙」でちょっとうるっときて笑う。
ブレヒト、飽きた(汗) 「肝っ玉おっ母と息子たち」読んだ。
いろいろ現代文学のお手本なんだろうな、というのは想像できるが、でも、例えばこれを下敷きに書かれた筒井康隆の「馬の首風雲録」のあとでは、ちょとぬるいって思ってしまうのだった。
「ビールと古本のプラハ」千野栄一 読了。
このエッセイの書かれた90年代では、まだ「黄金の虎」というビアホールは、一見さんお断りの店でフラバルがやって来たりしていたようですが、今では完全に観光客相手の店みたい。古本屋も同じく。資本主義は「懐旧」という感情を大切にするのだなぁ。
「螺旋」パハーレス (自製電子書籍版)読了。
面白いか面白くないかと問われれば、面白いよ!
このミス新人賞なら、全会一致で大賞レベル。って評価低いなw
良い点。
1. 読者の予想を半分だけ外し半分は期待どおりに進めるストーリーの完璧な制御ぶり。天才。
2. マドリッドの(末期的な)麻薬事情や文学関係の小ネタなどのはさみ方。取材に裏打ちされたリアル。秀才。
ダメな点。
1. あまりにもお手軽に、天才的なストーリーの奴隷となる人びと。
2. 人間が描けていないw
でも20代後半の処女作がこれって奇跡だよ。
ノーテボーム「木犀!/日本紀行」
いきなり、日本人にとって英雄とは破綻者のことだ、と言われて爆笑。まさしく。芸術家も文学者も研究者も職人も、兎に角、その道を究めた手本となる人々は、みな、常識的には破綻者であることが期待されているw
そして、やっぱり傑作なわけだが、続けて「儀式」が翻訳刊行予告されておる。まだまだ生きようと誓う。
「ジェイクをさがして」チャイナ・ミエヴィル読了。
「鏡」さえ無ければ傑作短編集なのに。でも、一般的なSFファン的には「鏡」が一押しなんだろか。鏡の世界で人間たちの真似を強制させられていた怪物達がある日こちら側に反撃し…。で戦闘シーンが長いのよ。暑いんだからもっとクールにw
ぼくが好きなのは、路地「が」放浪するw「ロンドンにおける"ある出来事"の報告」、無意味から見放される神経症的「細部に宿るもの」、無意味の意味に胸を衝かれる「仲介者」など。これらはコルタサルが書きそう。
積ん読ひっくり返して「トカジノフ」読了。
「鳩殺し」「Jの利用法」の破壊のディテールが好きですが(あくまで作品としてw)、「二十八歳の事情」や「二種族激突」の女性が追い詰められる話も好きです(あくまで作品としてw)。
「土星の環」ゼーバルト
読んでいる間だけ理解している気がする。読む(書く)時間を強制的に共有させる作品。読み終わると、なんだか霞がかかったような馬鹿になった心地。
『文士厨房に入る』ジュリアン・バーンズ
ちびっと立ち読み。オーガニック肉屋に栗鼠の肉を注文するくだり
「関節ごとにばらす利点は?」
「解体しないとおそらく栗鼠そのままに見えるでしょうね」
に爆笑してしまひ、そのままお買い上げ。翻訳はあんまりよくないけど、笑えます。料理本についてあげつらうのが主ではあるけど、深読みすると文学をくさしているみたいで二度おいしい感じ。
『百億の昼と千億の夜』 光瀬龍
実に30年ぶりに再読。(三読?四読?) ヘリオ・セス・ベータ型開発にうっとりw でも、これ、SFってより時代劇だな。「喪われた都市の記録」の方を読み返したいが。
「ヴィクトリア朝の寝椅子」 マーガニータ・ラスキ
超濃厚な150ページ。結核で療養中の奥様メラニーが寝椅子の上で目覚めるとそこは1864年。自分はミリーと呼ばれ、やはり肺を病んでいるのだった・・・。
凄いのは、メラニーの自意識にミリーの記憶や意識が当たり前のように頻繁に上書きされていく仕掛け。メラニー視点の作品なのにメラニー自身が自分の意識から締め出されてしまう恐怖。おもしれっす。
ボラーニョ 「野生の探偵たち」読了!
これを読まない人は、履歴書やプロフィールに「趣味、読書」と書くの禁止。 「2666」もそのうち出るんだっつーことで、神様、もう少しだけ生きさせてください。
「野生の探偵たち」は登場人物が半端なく多い(つか、どいつもこいつも自分目線で自分のことしか言わない(つか、それがこの作品の根幹なんですが))ので、白水社渾身の人物表(http://www.hakusuisha.co.jp/exlibris/ELNews08.pdf)が必携。
ただし、この人物表を最初にみんな読んじゃうと、けっこう興ざめになるのでご注意を。自力で何度も前を読み直したりして、それでもよくわかんなくなったときに参照、という感じがいいかも。 そういえば、ルペを追い掛け回す極悪アルベルトが人物表に載ってないので、アルベルト・モーレと混同w
北野勇作 「メイド・ロード・リロード」 ふろ二回で読了。
これを批判する人には、冥土で死にかけるくらい現実で迷子になってから出直せ、と思う。
ぼくは迷子に疲れて悩まなくなって20年。未だに迷い続ける北野勇作は凄いです。
ちなみに、ぼくも「ラ・ムー」と聞いて「菊池桃子かい」と実際につっこんだ世代w
ジャック・ルーボーの自筆サイン入り 『麗しのオルタンス』を東京創元社様よりいただきました!続編翻訳出版熱烈希望!
なぜか今ごろ「有頂天家族」森見登美彦。弟タヌキがふつうに可愛い。
タヌキと天狗と人間がふつうにコミュニケーションするような異常な設定での、タヌキ家族の心温まる物語。たいへんなことが起きると思って読むと、わりとふつうのことしか起きないと思うかも。いや、そらもうたいへんな騒ぎですが、でも、想定内の大騒ぎという、ちょっと不思議な感覚。
「鋼の錬金術師(25巻)」荒川弘
いよいよクライマックスなのか? ちゃんと全員の見せ場を作ろうとしているので、クライマックスがあと数巻は続くのではないか。
「のだめカンタービレ」番外編ってのが出てたのね。日本凱旋、R&Sオケ「魔笛」オペラ編。作者が楽しそうな細かいギャグ満載w 本編最終巻の100倍面白し。
海堂尊『マドンナ・ヴェルデ』
p.79 「昔の生理は沈鬱な冬の日本海だが、今回の生理は、明るい陽射しのエーゲ海のようだ」を読んで、読み進める気力が失せそうになったが、理恵ちゃん先生の人間業とも思えない無神経ぶりが面白いのでがんばって読了。しかし文章は無理矢理な純文学風。実は代理母問題を真正面から取り上げたわけでもないし、その小説的な解決にも唖然。ちょっと目指す方向がちがうんじゃないかと思いました。つか、「極北クレイマー」の続きを読みたい。
「スフィンクス (flowers comicsシリーズここではない・どこか 2) 」 萩尾望都さま
「考えない人」 宮沢章夫
「ブラッド・メリディアン」 コーマック・マッカーシー 中断
「書店繁盛記」 田口久美子 電車本
「伊藤計劃記録」 伊藤計劃 就寝本
「ハンター×ハンター」 冨樫義博 鬱本
『倒壊する巨塔―アルカイダと「9・11」への道』 ローレンス・ライト (訳:平賀秀明)
三週間近くかけて、ようやっと読了。下巻に入ってタリバンと結託するあたりからは怒涛の勢いで早い。
いろいろ言いたいことはあれど、まあ、FBIのジョン・オニールに感情移入してしまった時点で、こっちの負けw
いろいろのうちの大き目の感想として、リアルな(等身大の)人間の関わりが現実である、という著者のほぼ絶対的な信条に裏打ちされて、ノンフィクションの傑作になっていると同時に、とてもよく出来たフィクションを読んだときと何ら変わらない読後感にもなってしまったと思う。FBIに対するCIAの情報隠蔽による悲劇の予告とか、ザワヒリとビンラディンの両方に障害のある子供がいたとか、なんというか、途轍もなくよく出来ている。
「深海のYrr」
「深海のイール」読み終わったけど、感想書く気になれず。
けっきょく、クジラ大暴れの上巻が一番凄かった。
残りの1000数百ページは、「ジョージ・クルーニーやユマ・サーマンに出演して欲しい」と作者がほざく通りのハリウッド・ムービー。
二週間もかけたのを少しだけ後悔。
つか、イヌイットの自分探しや、ドボルザークでワインを飲みながら湖の辺の別荘で女を口説くクソキザなオヤジはいらん。(しかしどっちも主人公なのでどうしようもない・・・)
「水底の妖」 ロバート・ファン・ヒューリック
半分読んで力尽き、後半は飛ばし読み。なんでかな。ちゃんとした本格物のようで、しかも、唐代中国(7世紀後半)を舞台にしていて、キャラクターもシリーズ化された楽しい方たちで、でも、ぼくにはまったく肌が合わなかった。 判事、まったく推理のスの字もしていないし(前半の話ですが)。
ぎっくり腰で日曜と月曜を動けず。医者(というかリハビリの若いお兄ちゃん)に、「おっさん、腹筋弱すぎ。ヘソ引っ込めて、ヘソ!」(当社比で悪意80%増量)などと言われ、哀しい。
その後の読了本
「天地明察」 冲方丁
時代劇はほぼ読んだことないので、これのどこが正統から外れているかは分からず。ただし、エンターテインメントが「面白い」を第一義とするなら、エンタメのど真ん中。最初から最後まで面白さまみれ。日本の暦を800年ぶりに改めた主人公渋川春海の成長を軸に、あの関さんとか奇人変人も確かに登場しますが、でも基本的に、みんなとっても「いい人」。江戸がこんな時代だったら、そっちに生まれたかったな、とか思ったり。
「熊の場所」「バット男」「ピコーン」 舞城王太郎
「ピコーン」の主人公(17歳女)のアバズレを軽々と超えてみせる文体のアバズレかたが素晴らしいと思う。「熊の場所」「バット男」は、なんかテーマに縛りがあったのか、ちょっと窮屈そう。でも水準以上。(私の「水準」は、日本文学とやらにはないので、水準ったらもう世界文学レベル)
そんで、さらに、「山ん中の獅見朋成雄」を読んでるとこ。
「九十九十九」 舞城王太郎
「水曜日」が破綻した感じ。でも、どんなに風呂敷ひろげても、三つ子やその母親たちへの愛に帰ってくるので許す。けど、眼窩性交が夢に出て驚きました。